2015年4月に読んだ本まとめ
はじめに
先月読んだ本のまとめです。
感想は読み終えた直後に「読書メーター」に記すことにしているので、以下の感想は基本的にそこからのコピペ(ですます調ではありません)です。が、こちらではジャンル・著者ごとに整理したうえで、一部の感想に手を加えたりしています。
小説(海外)
翻訳の文章に苦手意識があって海外の小説はあまり読まなかったのですが、読んでみると意外と大丈夫なことに今更気がつきました。結構はまってしまい、読みたい本がたまっています。
■エレンディラ (ちくま文庫)
- 作者: ガブリエルガルシア=マルケス,鼓直,木村栄一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1988/12/01
- メディア: 文庫
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■キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)
キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)
- 作者: J.D.サリンジャー,J.D. Salinger,村上春樹
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2006/04
- メディア: 新書
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すらすら読めるが、漠然とした不安がずしりと残る。生意気で未熟なホールデン君が敬意を抱く数少ない人物の1人、アントリーニ先生。その先生が未熟なホールデンを見る目線とホールデンが妹をみる目線、さらには「ライ麦畑のキャッチャー」が崖から落ちそうな子どもを見る目線や、『フラニーとズーイ』のズーイがフラニーを見る目線が交錯した。本書がしばしば「青春文学」と呼ばれるのは、「無価値な大義のための高貴なる死」を迎えそうになっているホールデンに対する先生の危惧が、多くの若者にとって他人事ではないからだろうか。
凍った池におけるアヒルと魚に関する会話は、ホールデンにとって決して無意味なものでは無い気がしてならない。あと、回転木馬の金色の輪っかに関してホールデンの考えた「子どもたちが金色の輪っかをつかみたいと思うのなら、好きにさせておかなくちゃいけないんだ」云々も、なぜか印象に残った。これらに隠喩が含まれいるのか、あるいは考えすぎか……
- 作者: サリンジャー,村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/02/28
- メディア: 文庫
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p76の「意味論的な幾何学(そこでは任意の二つの点を結ぶ最短の距離は完全に近い円を描く)を用いた会話」って何だよ、と引っかかっていたが、隠喩を用いた会話のことなのかな。「どんな頭蓋骨を持ちたいか」とか、「太ったおばさんのために靴を磨く」とか。
■グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)
- 作者: スコットフィッツジェラルド,Francis Scott Fitzgerald,村上春樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/11
- メディア: 単行本
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■月と六ペンス
(新潮文庫)
- 作者: サマセットモーム,William Somerset Maugham,金原瑞人
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/03/28
- メディア: 文庫
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余談だが、村上春樹はモームの短編を翻訳することで英語を勉強したらしい。英語版は海外の青空文庫的存在「Project Gutenberg」にあったので、暇なら読んでみようかなあ。
■わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
- 作者: カズオ・イシグロ,土屋政雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/08/22
- メディア: 文庫
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- 作者: ヘルマンヘッセ,高橋健二
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1951/12/04
- メディア: 文庫
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■シッダールタ (新潮文庫)
- 作者: ヘッセ,高橋健二
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1959/05/04
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「すべての声が川の声の中にある」というところからは、幸田露伴の『観画談』における「ザアッ」という雨の音や、『デミアン』における炎(これは聴覚ではなく視覚だが)のシーンを連想した。原文を読んでみたくなったけれど、ドイツ語はほとんど覚えていないのが残念…
■トニオ・クレエゲル (岩波文庫)
- 作者: トオマス・マン,実吉捷郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/09/18
- メディア: 文庫
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■伝奇集 (岩波文庫)
- 作者: J.L.ボルヘス,鼓直
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1993/11/16
- メディア: 文庫
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そういった抽象的な概念が各短編に単発で現れるだけでなく、作品どうしで絡みあっていたりする。例えば、「ハーバート・クエインの作品の検討」で提示される分岐の構造は「八岐の園」に取り入れられている。さらに、造物主はその分岐を無限にすることを選ぶと述べられているが、そこに生じる無限のランダムネスは「バビロニアのくじ」における無限のくじ引きとしてすでに登場しているのである。無限のくじ引きが有限の時間中に収まるのか?というゼノンのパラドックス的な考えは、他にも「死とコンパス」のD点や「隠れた奇跡」に表れる。余談だが、「バベルの図書館」からは「円周率には、あらゆる有限の数字列(文字に変換すれば聖書もシェークスピアも)が含まれる!?」云々の話を連想した。「記憶の人、フネス」は、忘れること・一般化/抽象化することの重要性に関するものであり、これはコンピュータ・AIについて考えるうえでも示唆に富んでいる。
表紙が怖いので一見したら怖い話集みたいだが、そういうものではなかった。最初の方(「円環の廃墟」より前あたり)はよく分からなかったが、最後まで読んでよかった。ボルヘスという人がプログラミングをするなら、Lisperになるんじゃないだろうか。僕は『ゲーデル、エッシャー、バッハ』を読んだことはないけれど、あれを読む系の人はこの伝奇集も気にいるのではないかと思う。勝手な思い込みだけど。
追記。「フェニックス宗」は何かの寓意であることが「プロローグ」で示唆されているのだけれど、よく分からなかった。日本語でググっても見つからなかったが、英語版Wikipediaに書いてあった。
The Sect of the Phoenix - Wikipedia, the free encyclopedia
ネタバレになり得るので書かないけれど、上記URLのDiscussion on meaning の章に"The probable and common answer is that the riddle refers to ***"と明かされている。なるほど〜。確かに、そのつもりで読むと意味深な記述があるなあ。
小説(国内)
日本の小説はもともと好きです。海外の小説は基本的に内容を楽しみますが、日本の小説は作家の書いた言葉をそのまま読むことができるので、文体や言葉の美しさも楽しめるのが良いです。
■紫苑物語 (講談社文芸文庫)
- 作者: 石川淳,立石伯
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1989/05/05
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- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1950/12/22
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■三四郎 (新潮文庫)
- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1948/10/27
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柄谷氏の解説には「おそらく三四郎の脳裡の画像に描かれるのは、美禰子が一瞬示した『憐れ』のはずである」とあり、『草枕』の画工が那美の顔の「憐れ」に「それだ!」と言ったことにも言及している。憐れといえば、作中に登場する"Pity's akin to love"(「可哀想だとは惚れたと云う事よ」)という一節が連想されるなあ……
先生は、夢に出た「女」のせいで結婚しないのかという質問に「それ程浪漫的な人間じゃない」と言うが、三四郎の心の中で美禰子のことが後を引きそうで不安である。
初読時には三四郎が初めて図書館に入るところが印象に残ったのだが、今回読んでみるとこんなもんだっけと思った。初読時に抱いていた大学への憧れによるものだろうか。いずれにせよ、三つの世界の間を揺れ動く三四郎には共感を覚えた。
■それから (新潮文庫)
- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1985/09/15
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■陰悩録―リビドー短篇集 (角川文庫)
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2015/01/30
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■最後の喫煙者―自選ドタバタ傑作集〈1〉 (新潮文庫)
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/10/30
- メディア: 文庫
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■神様 (中公文庫)
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2001/10
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その他
雑草
■身近な雑草の愉快な生きかた
- 作者: 稲垣栄洋,三上修
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/04/08
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絵本
■木をかこう (至光社国際版絵本)
- 作者: ブルーノ・ムナーリ,須賀敦子
- 出版社/メーカー: 至光社
- 発売日: 1985/01
- メディア: 単行本
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新書
■翻訳夜話2 サリンジャー戦記 (文春新書)
- 作者: 村上春樹,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/07/19
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エッセイ
■陰翳礼讃 (中公文庫)
- 作者: 谷崎潤一郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1995/09/18
- メディア: 文庫
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■村上朝日堂はいかにして鍛えられたか (新潮文庫)
- 作者: 村上春樹,安西水丸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1999/07/28
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■日出る国の工場 (新潮文庫)
- 作者: 村上春樹,安西水丸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1990/03/28
- メディア: 文庫
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おわりに
どれも面白かったのですが、無理やり順位をつけるとすれば、
- 『伝奇集』
- 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』&『フラニーとズーイ』&『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』のセット
- 『三四郎』
- 『エレンディラ』
- 『身近な雑草の愉快な生きかた』
みたいな感じですかねー。ジャンルがバラバラなので難しいですが。
過去に読んだ本はこちら↓roomba.hatenablog.com
roomba.hatenablog.com