ハコベのうぶ毛に潜む規則性
はじめに
春が来ました。様々な植物が花を咲かせており、その生命力に驚かされます。ということで、雑草の本を読んでから花見ついでに野に出てみることにしました。
以下の本ではカラー写真付きで様々な雑草の豆知識が得られるので、これを読んでから地面を眺めると、今まで無視していた雑草たちが個性を主張してくるような気分になり親近感がわきます。良く見てみると沢山の雑草が生えているのですが、大人になるにつれて気にも留めなくなってしまうものですね。
- 作者: 田中修
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/03
- メディア: 新書
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以下では、「ハコベ」という雑草に注目し、その茎に生えるうぶ毛の方向の規則性について述べていきます。この規則性は本で読んだのではなく少しだけの観察から見出したものなので、あまり鵜呑みにはしないでくださいね。
ハコベの観察
ハコベとは?
さきほどの『雑草のはなし』を携えて観察に出かけてみたところ、本に載っている雑草のうち10種類近くを見つけることができたのですが、特に興味深かったのは「ハコベ」です。春の七草では「ハコベラ」として知られており、写真のような小さな花を咲かせます。
ハコベのうぶ毛
そんなハコベですが、『雑草のはなし』によると「茎には、なぜか、片側だけに毛が生えている」とあります。観察してみると、下の写真のように確かに片側だけに毛が生えていました。人間でいうと脚の右側だけすね毛が生えているような状態です。きもいですね。
で、気になるのがその毛の向きです。きっと太陽の方向にだけ毛が生えていたりするのだろうなーと思って良く見てみると、節ごとに90度単位で向きが変わっているではありませんか。人間でいうと、膝下では右側にのみすね毛が生え、大腿部では前方にのみ毛が生えているような状態です。そんなこと本に書いてなかったぞ!
図示すると以下のような感じです。赤色がうぶ毛です。
うぶ毛の向きの規則性
そこで、何本か眺めてみるとその規則性が見いだせました。結論をはじめに示すと、以下の図のようになります。
枝分かれが有るときと無いとき(節)で場合分けをしており、それぞれの説明は:
- 枝分かれが有るとき:上図の左側
→ 枝分かれの上側の2本の茎では、内側に向かってうぶ毛が生えている。これらの茎と同じ向きに1対の葉っぱが出ている。
→ 枝分かれの下側の茎では、枝分かれ上部の茎・葉と直交する向きにうぶ毛が生えている。
- 枝分かれが無いとき(節):上図の右側
→ 節の上側と下側で90度回転する。どちら側に90度かは、株によるっぽい(後述)。
→ 葉っぱの向きは、節の上側のうぶ毛と平行な(下側のうぶ毛と直交する)向き。
うぶ毛の螺旋パターン
枝分かれがない部分を考えます。先述のように節ごとにうぶ毛の向きが90度回転しますが、このとき2通り(右回り・左回り)の回転方向が考えられ、それぞれ以下の図のような螺旋形状を生み出します。
観察してみると、どちらの回転方向も存在するようです。ただし、観察した限りでは1本の茎の途中で回転方向が変化することはなさそうでした。
うぶ毛の役割
ここまでうぶ毛の方向のパターンを考えてきましたが、そもそもこの毛は何のために存在するのでしょうか? 以下の本から引用してみます。
- 作者: 稲垣栄洋,三上修
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/04/08
- メディア: 文庫
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ハコベが繁る冬場は雨が少ない。そこでこの細かい毛が繁った植物体についた水滴を根元に運ぶのである。限られた水分を巧みに利用しているから、ハコベは冬でも青々とみずみずしいのだ。
本当にそれだけかはともかく、水滴を運ぶ役割があるそうです。結露を誘発するのか雨粒を集めるのか、そのあたりはよく分かりません。
おわりに
雑草を観察しに出かけたら、本に書いていない規則性を見つけ、楽しかったという話でした。専門書とか論文を調べる気力はなかったのですが、うぶ毛の方向を決定するメカニズムが気になります…