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roombaの日記

読書・非線形科学・プログラミング・アート・etc...

2015に読んだ本200冊:分野別ベスト10

はじめに
2015年は結構多くの本(現時点で二百十数冊 221冊・63471ページ)を読んだみたいです。

小説もノンフィクションも同じぐらい読むのですが、まとめて順位付けするのは難しいので、以下の4区分それぞれにベスト10を選出しました。興味のある分野だけでもご覧下さい。

各本に短い紹介文を付しています。文学作品については素人の紹介文よりも実際の文章の方が雰囲気が伝わると思うので、一部の本には引用文も貼ってあります。


なお、今年読んだすべての本のタイトルは↓
roomba.hatenablog.com

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海外文学

個人的に小説に求めているものは、坂口安吾の『ドストエフスキーとバルザック』というエッセイにうまく説明されています。

小説は、人間が自らの医しがたい永遠なる「宿命」に反抗、或ひは屈服して、(永遠なる宿命の前では屈服も反抗も同じことだ――)弄ぶところの薬品であり玩具であると、私は考へてゐる。小説の母胎は、我々の如何ともなしがたい喜劇悲劇をもつて永劫に貫かれた宿命の奥底にあるのだ。笑ひたくない笑ひもあり、泣きたくもない泪もある。奇天烈な人の世では、死も喜びとなるではないか。知らないことだつて、うつかりすると知つてゐるかも知れないし、よく知つてゐても、知りやしないこともあらうよ。小説はこのやうな奇々怪々な運行に支配された悲しき遊星、宿命人間へ向つての、広大無遍、極まるところもない肯定から生れ、同時に、宿命人間の矛盾も当然も混沌も全てを含んだ広大無遍の感動に由つて終るものであらう。


坂口安吾ドストエフスキーとバルザック』)

以下ベスト10冊を紹介します。

1位 : カラマーゾフの兄弟 (新潮文庫)
〈上〉〈中〉〈下〉全3冊

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

「東大教師が新入生にすすめる100冊」で1位に選ばれたのも納得の、すごい作品。
東大教師が新入生にすすめる100冊: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

ドストエフスキーの作品はとにかく登場人物の個性が強く、物狂おしいエネルギーに満ちています。信仰が重要なテーマになっていることが多いものの、それ抜きでも面白いエンターテイメント性を兼ね備えています。

本作はタイトル通りカラマーゾフ家の兄弟(3人)が中心となる物語ですが、彼らに共通するのは「生への渇望」。 たとえば、次男イワンはこの世界に幻滅しながらもこんな言葉を吐いています。

「かりに俺が人生を信じないで、愛する女性にも幻滅し、世の中の秩序に幻滅し、それどころか、すべては無秩序な呪わしい、おそらくは悪魔的な混沌なのだと確信して、たとえ人間的な幻滅のあらゆる恐ろしさに打ちのめされたとしても、それでもやはり生きていたいし、いったんこの大盃に口をつけた以上、すっかり飲み干すまでは口を離すものか!」

また、イワンと三男アリョーシャの会話では、アリョーシャが人生の意味について語ります。

「この世のだれもが、何よりもまず人生を愛すべきだと、僕は思いますよ」
「人生の意味より、人生そのものを愛せ、というわけか?」
「絶対そうですよ。兄さんの言うとおり、論理より先に愛することです。絶対に論理より先でなけりゃ。そうしてこそはじめて、僕は意味も理解できるでしょうね。…」

長男ドミートリイは逮捕されるのですが、彼もまた生への渇望に燃えています。

「生きていたい、生きていたい、よび招くその新しい光に向って、何らかの道をどこまでも歩きつづけて行きたい、それもなるべく早く、一刻も早く、今すぐに、たった今からだ!」


「アリョーシャ、俺が今どんなに生きたいと望んでいるか、お前には信じられんだろう。生存し、認識したいというどんなに熱烈な欲求が、ほかならぬ漆喰の剥げたこの壁の中で、俺の心に生れたことだろう! (中略)数知れぬ苦痛を受けても、俺は存在する。拷問にのたうちまわっても、俺は存在する!柱にくくられてさらしものになっても、俺は存在するし、太陽を見ているんだ。太陽が見えなくたって、太陽の存在することは知っている。太陽の存在を知っているってことは、それだけでもう全生命なんだよ」

そんな人間たちについて、イワンの見た悪魔はこんな言葉を残します。

「そりゃ、もちろん、人間たちは苦しんでいるよ、しかし……その代り、とにかく生きているじゃないか、幻想の中でじゃなく、現実に生きているんだ。なぜなら、苦悩こそ人生にほかならないからね。苦悩がなかったら、たとえどんな喜びがあろうと、すべては一つの無限なお祈りと化してしまうことだろう。それは清らかではあるけど、いささか退屈だよ」

生への渇望。とにかく生きているということ。宿命人間へ向っての、広大無遍、極まるところもない肯定。これがカラマーゾフです。

謎とき『カラマーゾフの兄弟』 (新潮選書)を併せて読むと理解が深まるのでオススメです。


2位 : ヴィルヘルム・マイスターの修業時代 (岩波文庫)
〈上〉〈中〉〈下〉全3冊

ヴィルヘルム・マイスターの修業時代〈上〉 (岩波文庫)

ヴィルヘルム・マイスターの修業時代〈上〉 (岩波文庫)

教養小説*1という「主人公が様々な体験を通して内面的に成長していく過程を描く小説」の元締め的存在です。ゲーテが小説も書いていたというのは意外と知られていないかも?

なんだか堅苦しそうなイメージを持つかもしれませんが、普通にエンターテイメント的な意味でも面白いです。散りばめられた伏線が見事に回収される様なんかは圧巻。また、唐突に挿入される作中作が本筋とじわじわ関わってきたり、主人公らが演じる『ハムレット』(シェイクスピア)の世界が作品中に溶け出したような出来事が起こったり、構造的なおもしろさも含んでいます。

多くの名言を残したゲーテだけあって、箴言集として読んでも良いかもしれませんね。いくつか掲載します。

「自分をいつわらないで、自分の思うままにしていた日には、仲間うちのいい気分も満足も長つづきはしません。自分をいつわってばかりいては、それも駄目です。だから、初めから自分をいつわることにして、あとで、仮面にかくれて好きなだけ率直に振舞うというのは悪くないですね」


「腹中に巣くっている馬鹿を否定しないで、これがもともとの自分なのだと甘やかしていると、その馬鹿が、別の道を通り、自己欺瞞に助けられて、しばしば主人顔をするようになり、馬鹿はとっくに追い出したと自惚れている理性を、ひそかに下僕と」


「小説において描かれるのは、主として、思想と事件であり、戯曲においては、性格と行為である」


「人間にとっての不幸はただ一つ、なんらかの観念にとらえられて、活動的な生活になんの影響もあたえないか、活動的な生活からまったく離れてしまうことである」


「本なんて、わたしたちの過ちに上手に名前をつけてくれるだけなんですもの」


3位 : 悪霊 (新潮文庫)
(上巻)(下巻) 全2冊

悪霊 (上巻) (新潮文庫)

悪霊 (上巻) (新潮文庫)

無神論が重要なテーマとなっている作品。ざっくり言えば左翼の内ゲバ的な筋書きですが、スタヴローギンという人物が強烈な印象を残します。

「スタヴローギンは、たとえ信仰をもっていても、自分が信仰をもっていることを信じようとしない。信仰をもっていないとしたら、信仰をもっていないことを信じようとしない。」

個人的にはキリーロフという人が好きで、自殺して自分が神になる!みたいな思想を持ちながら無駄に健康に気を使っていたり、深夜に1人でお茶を飲んでいるという変わった人物です。かれの言葉をいくつか引用します。

「神はいないが、神はいるんです。石に痛みはないが、石からの恐怖には痛みがある。神は死の恐怖の痛みですよ。痛みと恐怖に打ちかつものが、みずから神になる。そのとき新しい生が、新しい人間が、新しいいっさいが生れる……そのとき歴史が二つの部分に分けられる - ゴリラから神の絶滅までと、神の絶滅から……」


「…人間が不幸なのは、自分が幸福であることを知らないから、それだけです。これがいっさい、いっさいなんです! 知るものはただちに幸福になる。その瞬間に。(中略)すべてがすばらしい。僕は突然発見したんです。」
「でも、餓死する者も、女の子を辱めたり、穢したりする者もあるだろうけれど、それもすばらしいのですか?」
「すばらしい。赤ん坊の頭をぐしゃぐしゃに叩きつぶす者がいても、やっぱりすばらしい。叩きつぶさない者も、やっぱりすばらしい。すべてがすばらしい、すべてがです。すべてがすばらしいことを知る者には、すばらしい」


「ぼくはおそろしく不幸だよ、なぜなら、おそろしく恐れているから。恐怖は人間の呪いなんだ…しかし、ぼくは我意を宣言するぞ、ぼくには、自分が信仰をもっていないことを信ずる義務があるのだ。(中略)ぼくは三年間自分の神の属性を捜し求めて、それを発見した。ぼくの神の属性はー我意だよ! これこそ、ぼくの不服従と新しい恐ろしい自由をその頂点において示すことができるすべてなのだ」

ステパンという人が残した対照的な発言も併せて。

「人間存在の全法則は、人間が常に限りもなく偉大なものの前にひれ伏すことができたという一事につきます。もし人間から限りもなく偉大なものを奪い去るなら、人間は生きることをやめ、絶望のあまり死んでしまうでしょう」


4位 : ドン・キホーテ (岩波文庫)
〈前篇1〉〈前篇2〉〈前篇3〉〈後篇1〉〈後篇2〉〈後篇3〉
全6冊

ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)

主人公ドン・キホーテは騎士道物語の読み過ぎで自らを騎士と妄想し、遍歴の旅に出発します。風車に突撃したりといった滑稽な行動が目立ちますが、狂気に囚われながらも高潔で雄弁で善良なドン・キホーテを好きにならない読書はいないはず。かのドストエフスキーも「人類の天才によって作られたあらゆる書物の中で、最も偉大で最ももの悲しいこの書物」と評しています。

後篇では、なんと登場人物たちが前篇を読んだという設定になっています。他にも異質な物語が突然挿入されたり、語りの設定が特殊だったりと、小説の構造的な試みをみつけることができるでしょう。


5位 : 罪と罰 (新潮文庫)
〈上〉〈下〉 全2冊

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

ドストエフスキーの作品のなかでは一番読みやすく、最初に読むのに適していると思います。後味が良いのもGood。「罪」と「罰」について考えるもよし、容疑者が追い詰められる刑事物として読むもよし、キリスト教における復活について考えるもよし、様々な楽しみ方ができる作品です。

謎とき『罪と罰』 (新潮選書)を読むと、そんなに謎が隠されていたのか!とびっくりします。


6位 : 伝奇集 (岩波文庫)

伝奇集 (岩波文庫)

伝奇集 (岩波文庫)

普通の小説とはちょっと趣の異なる短篇集で、以下のキーワードにときめきを感じる人にオススメします。理系との相性も良さそう。

シンメトリー・円環(ループ)・入れ子構造(再帰)・時間・空間・無限・ゼノンのパラドックスアキレスと亀)・無限級数・ものと記号の対応・同一性と同等性・分岐・ランダムネス・迷路・忘却と抽象化

筋書きに感動するのではなく、抽象的な思考をしたり、小説の構造の仕掛けを読み解くといった類の本ですね。


7位 : 魔の山 (新潮文庫)
(上巻)(下巻) 全2冊

魔の山 (上巻) (新潮文庫)

魔の山 (上巻) (新潮文庫)

2位の『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』と同じく、教養小説と呼ばれるジャンルに属します。主人公ハンス・カストルプくんの前に全く異なる思想を持ったセテムブリーニとナフタが登場し、思想と思想のぶつかり合いに揺り動かされます。かなり重厚で読み応えのある作品。

映画『風立ちぬ』や村上春樹の『ノルウェイの森』にも影響を与えた重厚な名作です。


8位 : 百年の孤独

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

南米のマジック・リアリズム。全く見たことが無いような世界が広がっています。
ネタバレになるので言えませんが、とにかく最後がすごいので、最後まで読みましょう。文庫化されていないのが残念。


9位 : 二都物語 (新潮文庫)

二都物語 (新潮文庫)

二都物語 (新潮文庫)

最近新潮文庫から新装版がでました。エンタメとして面白いし、情景描写も素晴らしい。とても小説らしい小説です。


10位 : 知られざる傑作―他五篇 (岩波文庫)

知られざる傑作―他五篇 (岩波文庫)

知られざる傑作―他五篇 (岩波文庫)

表題作『知られざる傑作』が良いです。
「芸術の使命は自然を模写することではない、自然を表現することだ」と考える老画家が、半ば狂信的なほどに絶対的な美を探求した結果…。作品内で繰り広げられる芸術論も必見。



次点(タイトルのみ)
ゴリオ爺さん (新潮文庫) : バルザック
■白痴 (新潮文庫)(上巻)(下巻) : ドストエフスキー
地下室の手記 (新潮文庫) : ドストエフスキー
■トニオ・クレエゲル (岩波文庫) : トーマス・マン
■エレンディラ (ちくま文庫) : ガブリエルガルシア=マルケス
■シッダールタ (新潮文庫) : ヘッセ
キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション) : サリンジャー
フラニーとズーイ (新潮文庫) : サリンジャー
タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫SF) : カート・ヴォネガット・ジュニア
■ガルガンチュア―ガルガンチュアとパンタグリュエル〈1〉 (ちくま文庫) : フランソワラブレー



日本文学

夏目漱石が多いです。
1位 : 行人(岩波文庫)

行人 (新潮文庫)

行人 (新潮文庫)

「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか。僕の前途にはこの三つのものしかない」

孤独 -- 周りに人がいないとかいう意味ではなく、もっとのっぴきならない絶対の孤独 -- を感じる作品。他者の心なんて本質的に理解し得ないのでは?と考えたことがある人には響くと思います。

行人という題名はなにを意味するか。参考までに一節を引用しておきます。

兄さんの苦しむのは、兄さんが何をどうしても、それが目的にならないばかりでなく、方便にもならないと思うからです。ただ不安なのです。従って凝としていられないのです。兄さんは落ち付いて寝ていられないから起きるといいます。起きると、ただ起きていられないから歩くといいます。歩くとただ歩いていられないから走るといいます。既に走け出した以上、どこまで行っても止まれないといいます。止まれないばかりなら好いが刻一刻と速力を増して行かなければならないといいます。その極端を想像すると恐ろしいといいます。冷汗が出るように恐ろしいといいます。怖くて怖くて堪らないといいます。

2位 : 明暗 (新潮文庫)

明暗 (新潮文庫)

明暗 (新潮文庫)

漱石が死の直前に書いた最後の作品。未完ですが、漱石の他の作品と比べて登場人物たちが饒舌で、ドストエフスキー的な熱気を感じます。

特に、小林という人物にドストエフスキーの影響が指摘されています(解説より)。彼自身がドストエフスキー読者という設定になっており、なかなか個性的で面白い奴です↓

露西亜の小説、ことにドストエヴスキの小説を読んだものは必ず知ってる筈だ。如何に人間が下賤であろうとも、又如何に無教育であろうとも、時としてその人の口から、涙がこぼれる程有難い、そうして少しも取り繕わない、至純至精の感情が、泉のように流れ出して来る事を誰でも知ってる筈だ。君はあれを虚偽と思うか」

金をもらって「サンクス」と答える小林は人をイラッとさせる天才です。

「だからやっぱり君に対してサンクスだ」


3位 : 虞美人草 (新潮文庫)

虞美人草 (新潮文庫)

虞美人草 (新潮文庫)

ちょっと文体が硬いところもありますが、内容は面白いです。煮え切らない登場人物が「真面目になる」場面は力強い。

僕が君より平気なのは、学問の為でも、勉強の為でも、何でもない。時々真面目になるからさ。なるからと云うより、なれるからと云った方が適当だろう。真面目になれる程、自信力の出る事はない。真面目になれる程、腰が据る事はない。真面目になれる程、精神の存在を自覚する事はない。天地の前に自分が儼存していると云う観念は、真面目になって始めて得られる自覚だ。真面目とはね、君、真剣勝負の意味だよ。やっつける意味だよ。やっつけなくっちゃいられない意味だよ。人間全体が活動する意味だよ。口が巧者に働いたり、手が小器用に働いたりするのは、いくら働いたって真面目じゃない。頭の中を遺憾なく世の中へ敲きつけて始めて真面目になった気持になる。安心する。

勧善懲悪ものと評されることもあるようですが、これは悲劇です。以下の引用が『虞美人草』の特徴を良く言い表しているのではないでしょうか?

問題は無数にある。粟か米か、これは喜劇である。工か商か、これも喜劇である。あの女かこの女か、これも喜劇である。綴織か繻珍か、これも喜劇である。英語か独乙語か、これも喜劇である。すべてが喜劇である。最後に一つの問題が残る。――生か死か。これが悲劇である。

(中略)

道義の観念が極度に衰えて、生を欲する万人の社会を満足に維持しがたき時、悲劇は突然として起る。ここにおいて万人の眼はことごとく自己の出立点に向う。始めて生の隣に死が住む事を知る。妄りに踊り狂うとき、人をして生の境を踏み外して、死の圜内に入らしむる事を知る。人もわれももっとも忌み嫌える死は、ついに忘るべからざる永劫の陥穽なる事を知る。陥穽の周囲に朽ちかかる道義の縄は妄りに飛び超ゆべからざるを知る。縄は新たに張らねばならぬを知る。第二義以下の活動の無意味なる事を知る。しかして始めて悲劇の偉大なるを悟る。……


4位 : 日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集08)

ミュージシャン出身の作家・町田康が翻訳した「宇治拾遺物語」。原文自体が下ネタ満載の笑い話のようなものですが、町田康の現代語によってそれが引き立っています。

1編のみ公開されているので試し読みしてみると良いでしょう↓
河出書房新社 — 町田康訳「奇怪な鬼に瘤を除去される」(『宇治拾遺物語』より)


5位 : 機械・春は馬車に乗って (新潮文庫)

機械・春は馬車に乗って (新潮文庫)

機械・春は馬車に乗って (新潮文庫)

横光利一による短篇集。『機械』『微笑』『時間』あたりが好きです。


6位 : 神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

村上春樹の短篇集。『かえるくん、東京を救う』が一番。


7位 : 文鳥・夢十夜 (新潮文庫)

文鳥・夢十夜 (新潮文庫)

文鳥・夢十夜 (新潮文庫)

夢十夜』が魅力的です。


8位 : 幻談・観画談 他三篇 (岩波文庫)

幻談・観画談 他三篇 (岩波文庫)

幻談・観画談 他三篇 (岩波文庫)

『観画談』がオススメ。幸田露伴は文体が好きです。


9位 : 千羽鶴 (新潮文庫)

千羽鶴 (新潮文庫)

千羽鶴 (新潮文庫)

川端康成の繊細な文章。美しい。


10位 : 化鳥・三尺角 他六篇 (岩波文庫)

化鳥・三尺角 他六篇 (岩波文庫)

化鳥・三尺角 他六篇 (岩波文庫)

泉鏡花の幻想的な短篇。文体にも現代の小説にはない無二の美しさを感じます。
『朱日記』『化鳥』が好み。


好きだけど再読のため除外
草枕 (新潮文庫) : 夏目漱石
■深い河 (講談社文庫) : 遠藤周作
■三四郎 (新潮文庫) : 夏目漱石
■勉強記 : 坂口安吾
桜の森の満開の下・白痴 他十二篇 (岩波文庫) : 坂口安吾

次点(タイトルのみ)
■葉桜と魔笛 : 太宰治
■門 (新潮文庫) : 夏目漱石
二百十日・野分 (新潮文庫) : 夏目漱石
彼岸過迄 (新潮文庫) : 夏目漱石
■紫苑物語 (講談社文芸文庫) : 石川淳
ノルウェイの森 上 (講談社文庫) : 村上春樹
ノルウェイの森 下 (講談社文庫) : 村上春樹
■歌行燈・高野聖新潮文庫) : 泉鏡花

ノンフィクション(理系)

1位 : 進化の謎を数学で解く

進化の謎を数学で解く

進化の謎を数学で解く

進化の過程では適者が淘汰に耐えることが重要な役割をはたしているらしい、ということはよく知られています。でも、適者はどこから来るのか? ちょっとした突然変異によって大きな変化が生まれるなんてことがあり得るのか? そんな疑問に答えてくれるノンフィクションです。

海外文学のランキングで紹介した『伝奇集』に『バベルの図書館』という短篇があるのですが、本書は「生命のバベルの図書館」なる比喩を用いつつ、知的好奇心をくすぐる議論を展開しています。進化というのは生命における代謝・タンパク質・調節回路の「バベルの図書館」を探索する過程のようなものなのですが、その図書館には「ある構造」が存在しており、それが進化のイノベーションを可能にしている、みたいな。これだけ聞いても分からないと思いますが、なんとなく面白そう!と感じたらぜひ。


2位 : 素数の音楽 (新潮文庫)

素数の音楽 (新潮文庫)

素数の音楽 (新潮文庫)

世紀を越えた難問「リーマン予想」に挑んだ数学者をめぐるノンフィクション。素数の背後にはこんなにも美しい光景が広がっていたのか…と感動します。「フェルマーの最終定理」が好きだった人はこれも気にいるはず。


3位 : 数学で生命の謎を解く

数学で生命の謎を解く

数学で生命の謎を解く

数学と生命科学の関わりについて書かれた本を好んで読むのですが、これは特にクオリティが高いと思います。

触発されてこんな記事も書きました↓
roomba.hatenablog.com


4位 : 音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか (ブルーバックス)

音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか (ブルーバックス)

音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか (ブルーバックス)

音楽と科学(数学)の関わりについて書かれた本もいくつか読みましたが、これだけ読めばまず十分でしょう。安定のブルーバックスです。
音楽の物理的・数学的な背景を知ることにより、新たな楽しみ方ができるようになるかもしれません。


5位 : 身近な〜シリーズ

身近な雑草の愉快な生きかた

身近な雑草の愉快な生きかた

身近な野菜のなるほど観察録 (ちくま文庫)

身近な野菜のなるほど観察録 (ちくま文庫)

身近な虫たちの華麗な生きかた (ちくま文庫)

身近な虫たちの華麗な生きかた (ちくま文庫)

身近な野の草 日本のこころ (ちくま文庫)

身近な野の草 日本のこころ (ちくま文庫)

地面を見る目が変わります。身近な雑草や野菜に関する様々な知識(語源・生態・関連するエピソード)が軽妙な口調で語られたエッセイで、読んだら散歩に出たくなることまちがいなし。シリーズの4冊を挙げましたが、雑草、野菜、昆虫、野の草の順におすすめします。


6位 : Cooking for Geeks ―料理の科学と実践レシピ (Make: Japan Books)

Cooking for Geeks ―料理の科学と実践レシピ (Make: Japan Books)

Cooking for Geeks ―料理の科学と実践レシピ (Make: Japan Books)

理系の目線で料理について考えた本です。肉のタンパク質は何度℃で変性するかといった化学的な知識のほか、ピザを等分するアルゴリズムが紹介されていたりもします。
「失敗したらピザを注文すればいいさ」みたいなノリもGood。


7位 : 図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)

図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)

図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)

天気予報でよく「上空の寒気により…」などと言っていますが、本書を読んでおけばその意味がよくわかります。数式を使わずにここまで原理を理解させてくれるのは素晴らしい!


8位 : 新 物理の散歩道 (ちくま学芸文庫)

新 物理の散歩道〈第1集〉 (ちくま学芸文庫)

新 物理の散歩道〈第1集〉 (ちくま学芸文庫)

新 物理の散歩道〈第2集〉 (ちくま学芸文庫)

新 物理の散歩道〈第2集〉 (ちくま学芸文庫)

「ロゲルギスト」という日本人物理学者のグループが交代で書いた物理エッセイです。身近なちょっとした疑問を物理学者たちの頭脳が解決してゆく様子が鮮やか。


9位 : 人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)

最近流行りのディープラーニングについて知るために最適の一冊。ディープラーニングとは何かだけではなく、なにがすごいのか、どう発展してきたのかといったことも併せて理解することができます。


10位 : エピジェネティクス――新しい生命像をえがく (岩波新書)

書評サイトHONZにレビューを書いている仲野さんの著書。ゲノムが全てではなかった!という驚き。


次点(タイトルのみ)
ケプラー予想: 四百年の難問が解けるまで (新潮文庫―Science&History Collection) : ジョージ・G.スピーロ
■カラー新書 日本の樹木 (ちくま新書) : 舘野正樹
雑草のはなし―見つけ方、たのしみ方 (中公新書) : 田中修
■生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫) : シュレーディンガー
■形態学 形づくりにみる動物進化のシナリオ (サイエンス・パレット) : 倉谷滋
■ハーモノグラフ: 和音が織りなす美しい図像 (アルケミスト双書) : A・アシュトン
■昆虫はすごい (光文社新書) : 丸山宗利


ノンフィクション(非理系)・エッセイ・旅行記

1位 : 自転車日記

夏目漱石がロンドンで自転車なるものに挑戦したときのエッセイのようなものです。おそらく文庫では読むことができないために知名度は低いですが、大げさかつ滑稽な文体で面白おかしく書かれています。

たとえば、自転車をマスターしていないのに美人な女性からサイクリングのお誘いを受け…

今まで沈黙を守っておった令嬢はこいつ少しはきるなと疳違かんちがいをしたものと見えて「いつか夏目さんといっしょに皆でウィンブルドンへでも行ったらどうでしょう」と父君と母上に向って動議を提出する、父君と母上は一斉に余が顔を見る、余ここにおいてか少々尻こそばゆき状態に陥るのやむをえざるに至れり、さりながら妙齢なる美人より申し込まれたるこの果し状真平まっぴら御免蒙ごめんこうむると握りつぶす訳には行かない、いやしくも文明の教育を受けたる紳士が婦人に対する尊敬を失しては生涯しょうがいの不面目だし、かつやこれでもかこれでもかと余が咽喉のどやくしつつある二寸五分のハイカラの手前もある事だから、ことさらに平気と愉快を等分に加味した顔をして「それは面白いでしょうしかし……」「御勉強で御忙しいでしょうが今度の土曜ぐらいは御閑おひまでいらっしゃいましょう」とだんだん切り込んでくる、余が「しかし……」の後には必ずしも多忙が来ると限っておらない、自分ながら何のための「しかし」だかまだ判然せざるうちにこうせんを越されてはいよいよ「しかし」の納り場がなくなる、「しかしあまり人通りの多い所ではエー……アノーまだれませんから」とようやく一方の活路を開くや否や「いえ、あの辺の道路は実に閑静なものですよ」とすぐ通せん坊をされる、進退しんたいこれきわまるとはただに自転車の上のみにてはあらざりけり、とひとりで感心をしている

また、「チンチンチャイナマン」と罵られて「御気の毒だね」と返すところも笑えます。

西洋人の論理はこれほどまで発達しておらんと見えて、彼の落ち人おおい逆鱗げきりんの体で、チンチンチャイナマンと余をののしった、罵られたる余は一矢酬いっしむくゆるはずであるが、そこは大悠だいゆうなる豪傑の本性をあらわして、御気の毒だねの一言をのこしてふり向もせずに曲って行く


2位 : 私の個人主義 (講談社学術文庫 271)

私の個人主義 (講談社学術文庫)

私の個人主義 (講談社学術文庫)

講演集です。なかでも「私の個人主義」はモヤモヤを抱えている若者にオススメ。

私はこの世に生れた以上何かしなければならん、といって何をして好いか少しも見当が付かない。私はちょうど霧の中に閉じ込められた孤独の人間のように立ち竦んでしまったのです。

こんな風に悩みを抱えていた漱石ですが、留学をきっかけに「自己本位」という考え方をつかみ、煩悶を脱するのです。親切な語り口が身にしみます。

もしどこかにこだわりがあるなら、それを踏潰すまで進まなければ駄目ですよ。 --もっとも進んだってどう進んで好いか解らないのだから、何かに打つかる所まで行くより外に仕方がないのです。私は忠告がましい事を貴方がたに強いる気はまるでありませんが、それが将来貴方がたの幸福の一つになるかも知れないと思うと黙っていられなくなるのです。腹の中の煮え切らない、徹底しない、ああでもありこうでもあるというような海鼠のような精神を抱いてぼんやりしていては、自分が不愉快ではないか知らんと思うからいうのです。


3位 : 謎とき『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』 (新潮選書)

謎とき『罪と罰』 (新潮選書)

謎とき『罪と罰』 (新潮選書)

謎とき『カラマーゾフの兄弟』 (新潮選書)

謎とき『カラマーゾフの兄弟』 (新潮選書)

ドストエフスキーの小説について分析した本です。登場人物の名前の語源を遡ったり、宗教的な背景を説明したりすることにより、より深い理解を得られること確実です。『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』を読んだ直後に読むのがいいでしょう。


4位 : 反哲学入門 (新潮文庫)

反哲学入門 (新潮文庫)

反哲学入門 (新潮文庫)

哲学がさっぱりわからない人にも理解できる本。そもそも西洋の哲学がどうして分かりにくいのかということにはじまり、歴史的な思想の変遷を大雑把に捉えることができる一冊です。


5位 : 笑う漱石・笑う子規

笑う漱石

笑う漱石

笑う子規 (ちくま文庫)

笑う子規 (ちくま文庫)

夏目漱石正岡子規の俳句が絵本になったもの。ユーモラスな句も多いです。

睾丸をのせて重たき団扇哉


6位 : ドストエフスキーバルザック

作家の坂口安吾ドストエフスキーバルザックの小説を好む理由を書いたエッセイ。単にドストエフスキーバルザックの特徴が説明されるだけでなく、一つの興味深い小説論になっています。この記事の冒頭にも引用しました。


7位 : 西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書) : 岡田暁生

西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)

西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)

西洋音楽の流れが分かる本。新書ですが、事実の羅列になったり読者に媚びたりすることのない良書です。


8位 : 村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた (新潮文庫) : 村上春樹

村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた (新潮文庫)

村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた (新潮文庫)

村上春樹の旅行記が好きで何冊も読んだのですが、個人的にはこれが好きでした。アメリカ滞在時のことが書かれており、肩の力を抜いて楽しく読むことができます。


9位 : ○○を知っていますかシリーズ

ギリシア神話を知っていますか (新潮文庫)

ギリシア神話を知っていますか (新潮文庫)

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)

新約聖書を知っていますか (新潮文庫)

新約聖書を知っていますか (新潮文庫)

ギリシア神話や聖書の知識を付けておくと、海外文学や芸術作品を理解する上で役に立ちます。阿刀田高によるこのシリーズなら楽しみながら教養を身につけることができるはず。


10位 : 音楽の基礎 (岩波新書)

音楽の基礎 (岩波新書)

音楽の基礎 (岩波新書)

作曲家の書いた本。ぎりぎり楽譜が読める程度だった自分でも、リズム・旋律・音程・和声・対位法などの様々な知識を得ることができました。



次点(タイトルのみ)
■現代の金融入門 [新版] (ちくま新書) : 池尾和人
■「草枕」変奏曲―夏目漱石グレン・グールド : 横田庄一郎
西洋美術史入門 (ちくまプリマー新書) : 池上英洋
■詩という仕事について (岩波文庫) : ボルヘス
ギリシア神話を知っていますか (新潮文庫) : 阿刀田高
旧約聖書を知っていますか (新潮文庫) : 阿刀田高
新約聖書を知っていますか (新潮文庫) : 阿刀田高
硝子戸の中 (新潮文庫) : 夏目漱石
■陰翳礼讃 (中公文庫) : 谷崎潤一郎
旅をする木 (文春文庫) : 星野道夫
■木をかこう (至光社国際版絵本)


各月の読書記録一覧(過去記事)
ブログを始めたのが2月なので1月の分はありません…
2015年2月に読んだ本まとめ - roombaの日記
2015年3月に読んだ本まとめ - roombaの日記
2015年4月に読んだ本まとめ - roombaの日記
2015年5月に読んだ本まとめ - roombaの日記
2015年6月に読んだ本まとめ - roombaの日記
2015年7月に読んだ本まとめ - roombaの日記
2015年8月に読んだ本まとめ - roombaの日記
最も偉大で最ももの悲しい『ドン・キホーテ』ほか - 2015年9月に読んだ本まとめ - roombaの日記
『悪霊』『Cooking for Geeks』ほか - 2015年10月に読んだ本まとめ - roombaの日記
『カラマーゾフの兄弟』ほか - 2015年11月に読んだ本まとめ - roombaの日記