DNA上の塩基配列とアミノ酸の対応関係を木構造で表現する
目次
はじめに
前提知識
われわれの体はタンパク質で出来ており、タンパク質はアミノ酸がたくさんつながることによって構成されています。そのアミノ酸の配列というのがどう決まるかというと、DNA上のA(アデニン)・T(チミン)・G(グアニン)・C(シトシン)の並び方から定まります。
ではDNA上のATGCの配列とアミノ酸はどのように対応付けられるのでしょうか?
物理学者のジョージ・ガモフは、ATGCからなる三文字の文字列(ATC, GCAなど)がそれぞれアミノ酸に対応していると考えました。なぜなら、ATGCの4種類の文字をn文字並べた場合4のn乗通りの文字列が存在しますが、n=2では4^2=16、n=3では4^3=64となり、アミノ酸が20種類であることを考えるとn=3文字の場合が最も妥当であると予想されるからです。
その後ガモフの正しさが証明され、DNA上のATGCからなる3文字の塩基配列が20種類のアミノ酸を冗長にコードしていることが分かりました。
(もう少しちゃんとした説明↓)
コドン - Wikipedia
この記事の目的
このような「3文字の塩基配列(コドンといいます)」と「アミノ酸」の対応を示すために、一般的には以下のような表が用いられます。灰色に示したのがコドン、その右が対応するアミノ酸の略称*1です。
TTT | Phe | TTC | Phe | TTA | Leu | TTG | Leu |
TCT | Ser | TCC | Ser | TCA | Ser | TCG | Ser |
TAT | Tyr | TAC | Tyr | TAA | 停止 | TAG | 停止 |
TGT | Cys | TGC | Cys | TGA | 停止 | TGG | Trp |
CTT | Leu | CTC | Leu | CTA | Leu | CTG | Leu |
CCT | Pro | CCC | Pro | CCA | Pro | CCG | Pro |
CAT | His | CAC | His | CAA | Gln | CAG | Gln |
CGT | Arg | CGC | Arg | CGA | Arg | CGG | Arg |
ATT | Ile | ATC | Ile | ATA | Ile | ATG | Met/開始 |
ACT | Thr | ACC | Thr | ACA | Thr | ACG | Thr |
AAT | Asn | AAC | Asn | AAA | Lys | AAG | Lys |
AGT | Ser | AGC | Ser | AGA | Arg | AGG | Arg |
GTT | Val | GTC | Val | GTA | Val | GTG | Val |
GCT | Ala | GCC | Ala | GCA | Ala | GCG | Ala |
GAT | Asp | GAC | Asp | GAA | Glu | GAG | Glu |
GGT | Gly | GGC | Gly | GGA | Gly | GGG | Gly |
しかしながら、この表をみても直観的に理解しにくいように思います。
木構造的な可視化
同様の例
以前の記事では、モールス信号の「・」「-」とひらがなの関係を木構造にして可視化しました。同様の考え方をここでは用います。roomba.hatenablog.com
方法
ATGCの4種類からなる3文字の塩基配列を順番に分類してゆきます。
まずは1文字目がどの文字かで4方向に枝分かれし、2文字目に応じてそれぞれがまた4方向に枝分かれし、3文字目でも同様に枝分かれします。最終的には4^3=64方向に枝分かれすることになりますね。
結果
結果(全体版)
以下のようになります。スペースの都合で2列に分割して表示しました。
結果(拡大版)
みにくいので拡大図を貼りました。
Tから始まる分
Cから始まる分
Aから始まる分
Gから始まる分
わかること
木構造によって表現された塩基配列とアミノ酸の対応を眺めていると、同じ文字色(すなわち同じアミノ酸)が4段ないし2段連続することが多いということが分かると思います。
これが何を意味するかというと、
- 同じアミノ酸が4段連続する
→ 3文字目によらず、1文字目と2文字目だけでアミノ酸が定まる
- 同じアミノ酸が2段連続する
→ 1文字目と2文字目だけでアミノ酸が2択に絞られる
ということになります。
これは冗長性という風に言うことができると思うのですが、なぜアミノ酸の種類によって冗長性が異なるのかはよく知りません。化学的な都合なのか、情報の圧縮的なことなのでしょうか???
おわりに
表の作成は以下の本を参考にしました。この本を読みながらこの記事の内容をふと思いついたのですが、特に深い関係はありません。
- 作者: イアン・スチュアート,Ian Stewart,水谷淳
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*1:以下のリンクを参考に。 タンパク質を構成するアミノ酸 - Wikipedia