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roombaの日記

読書・非線形科学・プログラミング・アート・etc...

2015年8月に読んだ本まとめ

はじめに

しばらくブログから遠ざかってしまいました。もう9月も終わりに近づいていますが、8月に読んだ18冊を記しておきます。

roomba.hatenablog.com


今月は「理系っぽい本」「小説(海外)」「小説(国内)」「その他(エッセイ・新書等)」の4つに分類しました。小説多めです。

各本について、タイトル・リンク・読書メーターに書いた感想(一部追加・修正あり・非ですます調)の順に記します。↓↓↓

8月に読んだ本(タイトル一覧)

■立体折り紙アート
■図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)
群論入門 対称性をはかる数学 (ブルーバックス)
二都物語 (新潮文庫)
ゴリオ爺さん (新潮文庫)
■予告された殺人の記録 (新潮文庫)
■親和力 (講談社文芸文庫)
■白夜 (角川文庫クラシックス)
■ジム・スマイリーの跳び蛙: マーク・トウェイン傑作選 (新潮文庫)
ドン・キホーテ〈前篇3〉 (岩波文庫)
ドン・キホーテ〈後篇1〉 (岩波文庫)
ノルウェイの森 上 (講談社文庫)
ノルウェイの森 下 (講談社文庫)
■夜のくもざる―村上朝日堂短篇小説 (新潮文庫)
■直島 瀬戸内アートの楽園 (とんぼの本)
■現代の金融入門 [新版] (ちくま新書)
■やがて哀しき外国語 (講談社文庫)
村上春樹 雑文集

以下詳細↓

理系っぽい本

理系なのに少なめです。

■立体折り紙アート

立体折り紙アート

立体折り紙アート

折り紙で立体的構造をつくるための設計方法と、各々の設計方法に基づく具体的な作品例(展開図)からなる本。とりあえず文章だけ読んだ。設計方法がとても興味深くて、折り紙研究の一端に触れることができる。これさえ読めばいろいろな形状を設計できるようになるので、ランプシェードか何かを作ってみたい。折り紙の応用事例として「人工衛星への応用」「トンボの羽の開き方」などが紹介されていて惹かれる。現代アートをみていると空間や次元を意識した(と思われる)ものが散見されるので、平面から立体をつくる折り紙もアートになるなぁと。


■図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)

図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)

図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 (ブルーバックス)

知識の羅列ではなく仕組みが分かる良書。数式を使わずにここまで納得させてくれるとは! 雲の粒のようなミクロなスケールから地球規模のスケールまで幅広く扱っており、雲・気温・雨・風・台風などの様々な知識を得ることができる。天気予報などで天気図を見る機会が多いだけに、今まではついつい2次元的に考えがちであったが、本書によって3次元的な(高さ方向を含む)考え方をできるようになった気がする。これを読んでおけば天気予報をより良く理解できるようになるし、空を見る目も変わるだろう。


群論入門 対称性をはかる数学 (ブルーバックス)

群論入門 対称性をはかる数学 (ブルーバックス)

群論入門 対称性をはかる数学 (ブルーバックス)

ブルーバックスだからちょろいぜ!と思って買ったところ、そんなに簡単な本では無かった…。必要な予備知識は高校生レベルだけど、特に後半はなかなか抽象的になってきて、用語の理解が曖昧なまま進んでしまうと詰まるかもしれない。とはいえ、あみだくじや15ゲーム・正多角形の合同変換といった具体的な例が随所に織り込まれているおかげで結構楽しかった。線形代数で習った準同型定理も登場。群論は抽象的でとっつきにくいが、それゆえに応用の幅も広そうなので、もう少し勉強してルービックキューブ対称性について理解を深めてみたい。


小説(海外)

幅広く読むようにしてみました。

二都物語 (新潮文庫)

二都物語 (新潮文庫)

二都物語 (新潮文庫)

さすがは世界的ベストセラー、とても小説らしい小説だった。緊迫感溢れるストーリーの推進力・映像の浮かぶ情景描写・いきいきとした人物像・読後の余韻・地の文の丁寧な語り(翻訳も良い)などなど、どれをとっても一級品だと思う。海外作品の情景描写は割と流し読みしてしまうことが多いのだけれど、本作品に関してはいくつもの印象的な情景が胸に刻まれた。ディケンズは初めてだったけれど、これは今年読んだ中でも有数の面白さで、一気にファンになりそうだ。分厚さから敬遠していたのがもったいない…。
「悲しいことに、じつに悲しいことに、太陽がまた昇った。しかし何より悲しいのは、すぐれた才能と心根を持ちながら正しく使うすべを知らず、己を助けることも、幸せにすることもできず、自分を損なうものに気づきながら、あきらめて身をまかせているこの男の姿だった」という一節がなんか好き。


ゴリオ爺さん (新潮文庫)

ゴリオ爺さん (新潮文庫)

ゴリオ爺さん (新潮文庫)

坂口安吾の『ドストエフスキーバルザック*1を読んで手に取ったバルザック。各登場人物(特にヴォートランとゴリオ爺さん)の性格や行為が際立っていて、確かに「現実よりも寧ろ高い真実性と共に完膚なくのたうち廻つてゐる」感じがする。最初の100ページぐらいは文章が全然頭に入ってこなかったのでちゃんと理解できているか自信がないけど、中盤以降はぐいっと引き込まれたし、最後は余韻が残った。ゴリオ爺さんにとっては悲劇的な物語だが、彼らの周囲に渦巻く複雑怪奇な社会を俯瞰する分には喜劇的でもあるのだ。面白かった。


■予告された殺人の記録 (新潮文庫)

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

あれほど十分に予告されていた殺人が実行されてしまった。それは「互いにつながり合った無数の偶然」によって初めて可能になるものであり、町の多くの人を巻き込むものであったのだ。事件前に血まみれナイフの幻覚を見たショックから発狂した人もいれば、事件の知らせを聞いて亡くなるまで尿道が塞がった人もいる。宿命がサンティアゴ・ナサールに与えた場所と任務は一体何だったのだろう? 薄いのに濃厚な一冊だった。冒頭一行目で早くも死が宣告されてからラストまで続く構成・語りも非常に巧妙。マジックリアリズム的要素はあまり無かった。


■親和力 (講談社文芸文庫)

親和力 (講談社文芸文庫)

親和力 (講談社文芸文庫)

ゲーテの小説はこれで2作目。ちょっと時間がかかった…。話の流れは比較的シンプルだが、解説で指摘されている通り象徴と寓意に満ちた作品であり、そもそも題名からして化学的な力を人間関係に適用した比喩のようなものだ。そのような象徴・寓意や作中作の存在は『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』と共通しているが、こちらには怒涛の伏線回収がない(はず)。最近読んだ他の小説と比べると随分説明的な印象を受けたが、そのぶん箴言のような文章も多かった。個人的には『ヴィルヘルム・マイスター』の方が好きだけれど、これはこれで面白い。


■白夜 (角川文庫クラシックス)

白夜 (角川文庫クラシックス)

白夜 (角川文庫クラシックス)

夢想的で孤独な青年の儚い物語。今まで読んだドストエフスキー作品とは毛色が違うが、孤独な青年は『罪と罰』や『地下室の手記』の主人公に近いものを感じた。彼は内気で臆病な感じだが、「ぼくはもうすぐびくつかなくなりそうです。でもそうなったらーぼくのテクニックもオジャンだ!…」と口をすべらせているところがひっかかる。なお、これは闇の中でみみずくんと闘うかえるくんがふと思い出す作品でもある(『かえるくん、東京を救う』*2)が、その意味はまだよく分からない。かえるくんが白夜の幻影のように消えてしまうことを暗示しているとか?


■ジム・スマイリーの跳び蛙: マーク・トウェイン傑作選 (新潮文庫)

ジム・スマイリーの跳び蛙: マーク・トウェイン傑作選 (新潮文庫)

ジム・スマイリーの跳び蛙: マーク・トウェイン傑作選 (新潮文庫)

トムソーヤとは随分異なる感じのほら話が多くて、結構笑えた。「スミス対ジョーンズ事件の証拠」は筒井康隆のドタバタ系短編を思い出す。「私の農業新聞作り」における「何言ってんだ、このトウモロコシの茎野郎、カリフラワーの馬鹿息子!」「このカブ野郎!」「あばよ、ルバーブ野郎」みたいな罵りはファウストの「腐れ樽め」「なんだとこの箒の柄が」と同様に好きだ。「経済学」において避雷針のセールスにブチ切れたときの「150本でも立てればいい!……納屋に1ダース立てろ!牛に2本立てろ!料理人にも1本立てろ!」も滅茶苦茶で好き。


ドン・キホーテは全6冊です。残りは9月に読了しました。

ドン・キホーテ〈前篇3〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈前篇3〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈前篇3〉 (岩波文庫)

2巻から続く物語中の物語や、「捕虜」「騾馬引き」「山羊飼い」らの身の上話が加わり、3巻では物語に一段と厚みが加わったように思う。ただ、それらの挿話がゲーテの『ヴィルヘルム・マイスター』のように本編と密接に絡むには至らなかった気がする(少なくとも前編では)。前編3冊だけ読むつもりだったがどうしよう。ともかく、ドン・キホーテという人物は頭がおかしいながらも僕の心を惹きつけるものを持っていて、読んでいて楽しかった。解説曰くドン・キホーテは「背伸びしすぎたスペインと自身に対する愛情のこもった諷刺でもあったのだ」。


ドン・キホーテ〈後篇1〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈後篇1〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈後篇1〉 (岩波文庫)

前編から少し間を空けて読み始めた。前編における冒険の内容が既に出版された設定になっており、登場人物が前編の矛盾や作中作の脈絡のなさに言及することもある。前編よりもドン・キホーテは正気に近づいている気がするし、従士のサンチョ・パンサは饒舌になっている。正義感がしばしば空回りするドン・キホーテの姿は愚かな狂人に見えることも多いが、彼の真っ直ぐな心には愛すべきものがある。少なくとも彼をからかう人々よりは。「否でも応でも狂人だってやつと、自分からすき好んで狂人になるやつと、どっちがより狂ってるんでしょうかね?」



小説(日本)

ぜんぶ村上春樹……

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

好き嫌いのわかれる小説と聞いたので不安だったが、面白かった。ただ、帯にあるような「恋愛小説」と簡単に分類できるかはちょっと疑問。もちろん恋愛的な要素はあるけれど、もう少し重い、失った者たち・歪みを抱えた者たちの物語というか何というか。性描写の多さも、そういう物語として読めば記号のようなものとして捉えられるし、恋愛小説として読むよりも気にならなくなるように思う。…まあ恋愛小説は読まないので自信ないけど。ところで、主人公が『魔の山』を読みながら訪れたところが魔の山的な場所だったのは興味深い。直子はおりて来られるのか?


ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

下巻に入って性的な要素が多すぎるのではと思わないでもなかったが、心に残る小説だった。冒頭の「井戸」とか、太字で書かれた「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」という言葉とか、最後の方で音楽をたくさん演奏する場面などが印象的。最初のページにある「多くの祭りのために」という言葉はいまいち良く分からないなぁと思っていたけど、その演奏の場面を読んで納得した。突撃隊みたいな面白い人もいて退屈しない。あと、なんとなくだけど、最後に緑に電話するところからはギャッツビーの最後の「緑の灯火」を連想した。
この小説は恋愛小説であると作者自身が語っているようだが、恋愛小説という”形式”によって生と死を描いた作品なのではないかなと思う。


■夜のくもざる―村上朝日堂短篇小説 (新潮文庫)

夜のくもざる―村上朝日堂短篇小説 (新潮文庫)

夜のくもざる―村上朝日堂短篇小説 (新潮文庫)

どれも良かった。ユーモアあふれるものもあれば、不思議な雰囲気の漂うものもある。気に入った作品はたくさんあって選ぶのが難しいけれど、いま思い浮かんだのを書くと『夜中の汽笛について、あるいは物語の効用について』『ことわざ(音読したい関西弁!)』『ビール(オガミドリさん「ばちばちに聞こえてるよ、これ」)』『夜のくもざる(「へっぽくらくら…」)』『フリオ・イグレシアス』などなど。最後の「朝からラーメンの歌」も、YouTubeで原曲を聴いたら微妙に韻を踏んでいておもしろかった。ラーメン嫌いがかいた歌詞とは思えない…

その他

アート・新書・エッセイ等。

■直島 瀬戸内アートの楽園 (とんぼの本)

直島 瀬戸内アートの楽園 (とんぼの本)

直島 瀬戸内アートの楽園 (とんぼの本)

直島は去年行ったが、この本が家に転がってたので今さら読んだ。感想というか思い出だけど、地中美術館のモネの部屋は良い。東京だと人ごみから頭を突き出さなければ鑑賞できないのに対し、ここでは十分に距離を取って静かに鑑賞できるし、運良く他に誰もいなくて独占状態だったのだ。印象派はあれぐらい広い部屋でみてこそという感じ。あと、豊島美術館SANAAの西沢さんの建築だったとこの本で知って、豊島にも行きたくなった…国立競技場もSANAA案が一番好きだったなぁ。


■現代の金融入門 [新版] (ちくま新書)

現代の金融入門 [新版] (ちくま新書)

現代の金融入門 [新版] (ちくま新書)

硬派な新書という印象。具体例を分かりやすく説明するという感じではなく、より本質的な内容を論理的に論じていて、新書というのはこうあって欲しいものだと思わされる。社会の仕組みとか銀行が何をしているかといったことを全然知らなかったので有益だった。「信用」・「人々の予想インフレ率」といった心理的?な要素が意外と効いているのだなぁと。特に興味深かったのは金融政策のところで、ちょっと制御工学っぽいなと感じた。全体として門外漢でも丁寧に読めば理解できるようになってはいるが、すぐに忘れてしまうのでまたいつか再読したい。


■やがて哀しき外国語 (講談社文庫)

やがて哀しき外国語 (講談社文庫)

やがて哀しき外国語 (講談社文庫)

アメリカ滞在記で、『うずまき猫〜』に比べると真面目というか、アメリカ論的な側面が強めだったように思う。あとがきによれば、若き日の村上さんは日本語的なものの呪縛から遠ざかりたいと思っていたようで、アメリカに来てから日本という国・日本語という言葉について真剣に向き合うようになったらしい。吉行淳之介作品の英訳を村上さんが再翻訳した文章が日本語の原文と並べられていて、その違いが興味深かった。プリンストンに来てまで共通一次(今でいうセンター試験?)の点数を持ち出す人間が存在したというのは確かにショッキングだな…


村上春樹 雑文集

村上春樹 雑文集

村上春樹 雑文集

題名通り様々な文章が収められていて、気に入ったものも多数。特に興味深かったのは、宗教(オウム等)と小説のそれぞれにおける「物語」について語っている文章(複数あった)。『アンダーグラウンド』は読んでいないけれど、あの件に対する村上さんの認識や、小説の果たし得る役割を感じ取ることができた。あとは、村上さんがときどきバッハのインヴェンションを弾くと知って、バッハの曲を弾こうとする(≠弾く)のが好きな僕としては勝手にシンパシーを感じた。安西水丸さんや高橋秀実さんについて書かれた文も面白いし、最後の対談も良かった。


おわりに

今月の個人的ランキングは、

といったところです。

*1:

*2:

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)